山の神の日

こんにちは閑話猿です。

本日12月12日は「山の神の日」といわれています。主に東北や北海道で山の神様がそこにある木を一本一本数えるという伝承から制定されているようです。

熊楠と山の神にといえば、「オコゼ」です。熊楠は明治44(1911)年に『東京人類学会雑誌』 第26巻 第299号へ「山神「オコゼ」魚を好むと云う事」を投稿します。これは山の神にオコゼを供える習俗について紀州の事例を挙げたものです。

この論文を契機に柳田國男から熊楠へ連絡があり、二人は書簡のやりとりを行います。

山の神は何故、オコゼを好むのか?それはオコゼが山の神よりも醜いからだそうです。山の神は古来より女性神とされていますが、その容姿は美しいとはいえず、里の女性が山に入るとその美しさに怒り、災いをもたらすと考えられていました。

熊楠の文章のなかで、山神にもしBuxbaumia Minakatae S Okamura(クマノチョウジゴケ)を再び採取できれば、オコゼを献することを祈願すると、数日後に見つけたとあり、オコゼを購入して現在乾燥しているとあります。

山神特に好むオコゼは、常品と異なり、これを山の神と名づけ、色ことに美麗に、諸鰭(ひれ)、ことに胸鰭勝れて他の種より長く、漁夫得るごとに乾しおくを、山神祭りの前に、諸山の民争うて買いに来る。漁浜の民は、これを家の入口に懸けて悪鬼を禦(ふせ)ぐ、と(『南方熊楠全集』 2巻 平凡社 250頁)。

そして、紀州田辺の湯川氏が所蔵する山の神草紙の紹介を行っています。当館には熊楠が持っていたオコゼの標本が展示されています。

また、熊楠は岩手県の佐々木喜善と書簡のやりとりを行っており、田辺でオコゼがとれたら発送する旨が書かれています(『南方熊楠全集』 平凡社 8巻 559-560頁)。山の神とオコゼに関しては、熊楠は一時期興味を持って研究をしていたのですね。

山の神については、2021年8月1日の当館のブログ「山の神」でも紹介されています。https://www.minakatakumagusu-kinenkan.jp/2021/08/01/12217

またオコゼという名称ですが魚ではない「山オコゼ」もあります。

ブログ5月19日
https://www.minakatakumagusu-kinenkan.jp/2021/05/19/11584

オコゼの標本

山の神草紙写本