熊楠が好んだフウチョウソウ:8月9日(金)

皆さんこんにちは。南方熊楠記念館のチョボいちです。暑い日が続きます。全集で公開されている熊楠の昭和15年上松蓊宛書簡に「フウチョウソウ」の種子を送って欲しいという内容のものがあります。フウチョウソウと言えば、すぐに西洋風蝶草を思い浮かべますが、それとは違うようです。セイヨウフウチョウソウ(西洋風蝶草)は、クレオメと呼ばれて、熊楠が書いているように昭和の頃にはあちこちで見かけるようになったものです。「西洋フウチョウソウ」は華やかな花を蝶にみたてたものですが、英名は「スパイダーフラワー」で、花の様子を蜘蛛にみたてたものです。中国名は酔蝶花で、ピンクから白へと花の色が変わることによるようです。同じ花の名でも、国によって見立てが違っておもしろいです。熊楠は、西洋フウチョウソウに押されて日本古来のフウチョウソウを見かけなくなったので、「フウチョウソウ」の種子を送って欲しいと言っています。ちなみに料理に使うケパーは、フウチョウボクという別の植物の蕾です。よく似た名前ですが、別種です。大正から昭和の頃の熊楠の未公開の日記に、庭の植物としてクレオメソウはよく登場します。熊楠の庭にもたくさんあった、昭和レトロな西洋フウチョウソウ、クレオメソウを育ててみました。記念館の本館前は暗いためか、なかなか花芽がつきません。そこで、御製碑の前へ植木鉢を移動させたところ蕾がたくさんつきました。あと3日ほどで咲きそうです。しかし、台風が来れば、植木鉢の花は倒伏してしまいそうなので、玄関へ避難させます。クレオメソウは、アザミウマというナスの害虫を食べるタバコカスミカメという昆虫が好みます。そこで、ナスのハウス栽培では、クレオメソウを天敵が好きな植物としてナスと一緒に植えて、利用する場合もあるそうです。でも、タバコカスミカメも増えすぎると他の農作物の害虫になるので、天敵利用の農業もなかなか難しいようです。