南方熊楠記念館の見どころ紹介(3)

皆さん、こんにちは。南方熊楠記念館の館長です。

記念館を訪れると、新館1階エントランスホールで目につくのが「ランタン」と呼ばれている明かりとりです。この「ランタン」はインスタ映えする被写体のため、スマホを片手に見上げながら撮影をしているお客様の姿をよく見ます。

前回のブログやフェイスブックでも紹介しましたが、番所山の林の中に建つ記念館は光が入りにくいため、1階を全面ガラス張りにし、屋上階から1階までシリンダー状の吹き抜け構造をつくり自然光を取り入れています。

2階展示室の吹き抜け部分は大きな円柱形の構造となっており、熊楠の名前の由来となった熊野の森に立つ大楠のようにも見えます。

吹き抜けにはリボン作家の安東陽子氏が制作した「ランタン」が吊り下げられています。全長9.8m、直径3.5mの円筒型の作品で、吹き抜けの1階から2階部分までは緑色のリボン、屋上階は白色のリボンで編み上げられています。

ランタンのリボンは熊楠が書き残した文字やスケッチをレイアウトして生地にプリント、リボン状にカットした後、刺繍の技法で植物のツタのようなイメージで網目を描くように編み上げています。編み上げた「ランタン」を注意して見ると熊楠が書いた文字、スケッチの痕跡が見えます。

夕方になり吹き抜けのトップライトが点灯されると、屋上階の白色のリボンはライトに照らされ、遠くは円月島ビュースポットや三所神社付近、番所山第三展望台などから望むことができ、灯台ように記念館の位置を示しています。

また、天気の良い日にはランタン越しの木漏れ日が、編み目模様の影をつくり1階フロアーに映し出され、太陽の動きとともに刻々と粘菌が動くように位置をかえていきます。

作者の安東氏は「展示物というより植物的にしたい。植物の生命力を抽象的に表現している。空気感や抜け感を重視している。」と言っています。ご来館の際は「ランタン」をじっくりご見学ください。


ランタン

屋上階の様子

2階展示室の様子