「南方熊楠からまなぶ森と生物」の事業報告

本年度6月から紀の国森づくり基金活用事業・環境省吉野熊野国立公園パートナーシップイベント「南方熊楠からまなぶ森と生物」では、観察会やウォークイベントを行いました。各イベントについて本年行った内容を報告します。

 

○粘菌観察会 全2回  延べ参加人数:33名

川上新一氏(和歌山県立自然博物館)と山東英幸氏(和歌山信愛女子短期大学)を講師として7月9日、30日に、番所山で粘菌を採集し標本作り等を行った。2回とも開催日までに雨が全く降らず乾燥していたため、粘菌の発生が少なかったが、ジクホコリなど番所山で定番の粘菌を発見することができた。

川上講師から、雨の多い6月に実施できるようにすれば発見できる粘菌の数も種類も増えるだろう、との意見をいただいた。

 

○昆虫観察会 全2回  延べ参加人数:34名

的場績氏(元和歌山県立自然博物館)と藤五和久氏(ふるさと自然センター)を講師として8月20日、27日に番所山で昆虫採集、観察、講評を行った。採集前に講師から森と生態系のレクチャーがあり、そこから2班に分かれて番所山で採集を開始した。参加者は最初無闇に採集網を振り回していたが、講師に採集方法を習ってからは、採集数が増えていった。その後2班を集め、どのような昆虫が採集できたのか等講評を行った。

最後に的場講師から採集した昆虫を持ち帰って飼ってもいいと子供達に話した上で、保護者に向けて昆虫は飼っていれば必ず死ぬが、大事にしていたものが死ぬという経験が子供たちを成長させるというお話があった。採集した虫を標本にするという方針も検討されており、次回は採集昆虫の標本作成作業等を加えることも検討したい

 

○番所山ウォーク 全3回  延べ参加人数:34名

南紀熊野ジオパークガイドとともに、番所山の森をウォークするイベントを7月16日、9月17日、11月19日に開催した。森のなかでは植物や番所山が戦争遺跡であることも解説された。さらに番所山内のゴミ拾いも行った。ウォークの後半は磯に降り、漂着ゴミも拾った。山のなかも浜もプラスチックゴミやマスクが多く落ちていた。昨年に比べ2時間半のイベントとなったため、次回行うのであれば、ワークショップを加えること等も検討したい。

 

○鎮守の森ウォーク 全3回  延べ参加人数:35名

本年度から始めた新しい白浜町内を歩くウォークイベントである。 南紀熊野ジオパークガイドとともに、9月3日、10月8日、11月5日に開催した。9月3日には道路の照り返しが強く、熱中症が心配された。それでも貝寺(本覚寺)や藤九郎神社など町内の方々でも知らない場所を案内したこと等により、参加していただいた方々には好評であった。またFMビーチステーションによって特集されたことにより、第3回目には20名を超える方々に参加してもらった。

 

以下は、講師代表からのコメント

和歌山県立自然博物館 川上新一氏

7月9日は、落ち葉に発生するアワホネホコやホネホコリが見つかった。
アワホネホコリは例年同じ落ち葉だまりに発生する傾向がある。
それ以外は、朽ち木によく発生する種類が多く見つかった。
驚いたことに、看板を支える角材にマメホコリが発生していた。
7月30日も9日に見つかった種類と同じものが見つかったが、
例年観察会では散策しない、海側の林縁を散策したところ、
落ち葉にはジクホコリ、枯れ枝の集積橋にはキフシススホコリなどが見つかった。
来年度以降も、この場所を巡るコースで観察会を行うことを検討したい。

 

南紀熊野ジオパークガイド代表 浜田千佐子氏

「今年は「番所山ウォーク」と「鎮守の森ウォーク」2つのコースを、合計22名のガイド(2名重複)で案内させて頂いた。全6回ともお天気に恵まれ、各担当者は参加者の安全管理を優先に考えながら、初めての3時間コースを無事に終える事ができ安堵しています。 特に今年は、NHK朝ドラ植物学者牧野富太郎「らんまん」と、熊楠の関係が紹介されたので、海岸林や境内の花や草木にも興味を持たれた参加者がいつになく多くいらっしゃったようだ。例年の番所山周囲から更に足を延ばして、近隣のお寺や神社にも熊楠の足跡をしのびながら、又、ウォーク途中の地形なども説明させて頂くことにより、ガイドたちにも学びの場を提供して頂きました。

 

粘菌観察会 粘菌観察会 昆虫観察会
昆虫観察会 番所山ウォーク 番所山ウォーク
鎮守の森ウォーク 鎮守の森ウォーク